【お役立ち情報】家賃の半年分程度は初期費用として用意ブログ:19/12/06
丸いちゃぶ台を囲んで食事する時間が、
息子の頃の母にとっては
苦痛の時間だったらしい。
少しでも行儀の悪いことをすると、
祖父の手が飛んでくるからである。
一刻でも早くその場から逃げ出したいために、
焦ってクチの中にごはんを押し込む…
そのため食べ方はますます汚くなり、
祖父の手が飛んでくるという悪循環…
他にも…
熱があるのに
無理やり耳を引っ張って学校に連れて行かれたとか…
ちょっとした嘘をついたら
叩かれて目の前が真っ赤になったとか…
恐ろしい話を母から散々聞いていた。
「それに比べればだいぶ丸くなったのよ」と
母は最後にいつも付け加えた。
確かに俺たち孫に、祖父が手を上げることはなかった。
…が、怒鳴られることはしょっちゅうあった。
俺たちは、眉間の皺の深さを窺っては、
祖父の機嫌の良し悪しを判断していた。
くだものやおかしが出たときは、
いつも私たちに自分の分を食べさせた。
半ば強制的に食べさせるのである。
祖父は梨が嫌いだといつも言っていた。
梨が一番の好物だった俺は、喜んで祖父の分まで食べていた。
こんなに美味しいものが嫌いだなんて…と、
いつも不思議に思ったものだ。
大学生になった俺は、
暇ができると
祖父母の家に行くことが増えるようになった。
冷蔵庫に梨がたくさん冷やしてあるのを見て
祖母になぜかと尋ねたことがある。
「じいちゃんは梨が一番好きだからねぇ…」
祖母の何気ない一言にとても驚いた。
無愛想でいつも怒ったような顔をしていた無口な祖父。
クチを開くときはいつも怒っていたような気がする。
可愛がられた記憶などほとんどない…
しかし言葉でも態度でも示すことができないような
大きな愛情を確かに俺は感じた。